luica_novel

書いた小説の倉庫です

ゲッターロボ

お正月にはカニを食え

※大学生パロのアークチームのお正月 今年の正月は三人揃って獏のアパートで過ごすことになった。成り行きで。 獏は元々実家には帰らないつもりだった。兄は年末年始、教団の行事で忙しい。兄は気を遣わなくていいから帰ってこいと言うのだが、自分が行ったと…

火星で輝く一番星(拓カム)

テラフォーミングされた火星に四季は無い。活動のしやすい温暖な気候が一年中続くよう調整されている。だが地球から逃れてきた人々は、故郷の暮らしを忘れまいと、居住区であるドーム内に四季を再現した。気温や雨風、生えている植物に至るまで。『メリーク…

たむけの造花(竜號)

※月面デートする竜號 月へ行きたいと言ったら、竜馬は僅かに眉をひそめた。 「月?……あそこは戦場だった場所だ、ろくなもんじゃねえぞ。観光気分ならやめとけ」 「知っている。それでも行きたい。連れて行ってくれ、竜馬」 「どうしてそこまで行きたいんだ?…

地獄の空は青(ネオゲ/號と隼人)

地上は炎に包まれていた。瓦礫の山から必死になって這いずり出たにも関わらず、眼下に広がる景色は瓦礫の下よりももっと凄惨なものだった。鼻を突く焼け焦げた臭い。飛び散った血や肉片。つい数時間前までは人間だったもの。当たり前のように生きて、歩いて…

熾火、焼き芋、秋の空(竜號)

食欲の秋という言葉がある。秋はおいしい食べ物が多いのだという。ならばこれもその「おいしい食べ物」の一つなのだろう。 鮮やかな赤紫色。指を広げなければ持てないほどに太い。そんな大きすぎるさつまいもを二本、ゴウは竜馬の目の前に差し出す。竜馬は眉…

レインメーカー(竜號)

ざあざあざあざあ あめがふる つめたいつめたい あめがふる こえはとどかず ゆるしはえられず かなしみだけの あめがふる おまえは あめに あいされた ざあざあざあざあ やまぬあめ 流竜馬は雨男である。 本人は認めるつもりが全くないのだが、周りがしつこ…

「おいしい」は難しい(竜號)

自分には「おいしい」が分からない。――少なくともゴウ自身はそう思っている。そもそも彼は生まれの時点で「ふつう」の人間とは異なる特徴を持っていた。だからだろうか、エネルギー供給源として食事という行為は優先度が低い。もちろん食べ物を一切必要とし…

かわいこぶってる君がかわいい(拓カム)

「神司令、テスト飛行終了しました」 「今までよりも良い結果が出ている。悪くなかったぞ」 「ありがとうございます。新しいパーツの動作も確認済みです。テストで取れたデータを基に調整を加えれば問題はないかと」 「今回の結果は、新しいパーツのお陰だけ…

なんでもない日の幸福/あるいは、n年後の君へ(竜號)

ゴウが居そうな場所を探したが、一通り回ってみてもその姿が見えない。格納庫を彷徨っていると、整備士の一人に声を掛けられた。 「あ、竜馬さん。ゴウさんなら外にいますよ」 あっけらかんと言われて、竜馬は眉根を寄せた。なんで俺があいつを探してるって…

握った拳がほどけたら(拓カム)

肌を突き刺すような緊張感が場を支配している。その空気を作っているのは、一歩も引かずに睨み合う拓馬とカムイの二人だ。 たまたまトレーニングルームで鉢合わせたのが運の尽きだった。回れ右をしようとしたカムイを拓馬が挑発し、売り言葉に買い言葉、いろ…

いつか芽吹いて花になれ(竜號)

※「やがては枯れて朽ちるもの」の続き ※死ネタ 部屋の主が去ってもなお、その病室にはまだ花の香りが残っていた。最後のひと鉢を手放し終えた竜馬は、がらんどうになった病室に一人佇んでいる。ここにあった大量の花々はすべて枯れた。どれだけ新しい水を入…

ごめんね、連れていけないよ(竜號)

※現パロ?謎時空 ※ゴウくん(ショタ)を誘拐した竜馬が二人でいびつな生活を送る話 ※バッドエンド一直線 夜九時過ぎ。鍵を開けて中に入る。電気をつける。部屋の奥、ベッドにもたれかかっていたお前がぱっと顔を上げる。 「おかえり、竜馬」 明るい表情。弾…

穴が空くまで見つめてね(拓カム)

猫みたいな奴だと思う。ハチュウ人類と人間のハーフに対して「猫みたい」という形容が合っているのかどうかは別として。こいつはいつぞや見かけた野良猫によく似た挙動をする。俺が触ろうとすると爪を立てそうな勢いで拒絶してくるくせに、自分から近付いて…

夏を分解する指(竜號)

海に行くと決まってからのゴウの行動力は凄まじいものがあった。海でできる遊びをリストアップすることから始まり、必要な道具を集めて吟味し、砂像の作り方まで熱心に調べ上げていた。表情には出さないがよほど待ちきれないのだろう。毎朝、あと何日で海に…

たった二人の兄弟だから(拓カムとゴール三世)

※拓カム結婚しろシリーズ ※「それも君が生きていくための選択」からしばらく経った後の話 かつ「これより先は春」からの続き 籠の鍵を開けたあの時から、もう二度と会うまいと決めていた。自由と引き換えの離別だった。はばたいた鳥の翼は美しく、鳴き声は伸…

これより先は春(拓カム)

※拓カム結婚しろシリーズ ※「ロミオとジュリエットにはならない」から続いている 指輪が欲しい。それもとびきり頑丈なやつを。 その旨を伝えると、研究員の男は分かりやすく顔をしかめて「来る場所をお間違えでは」と言った。「一応確認しますが、ここは兵器…

やがては枯れて朽ちるもの(竜號)

※死ネタ ゴウくんに寿命が来てしまう話 ゴウが倒れた。何の前触れもなくその場に崩れ落ち、目を閉じたまま人形のように動かなくなった。かろうじて息も脈もあったが意識はない。丸三日間こんこんと眠り続けた。四日目の朝、彼は静かに目覚めた。そして透き通…

鼓膜からはじまる恋もある(竜號)

ブラックゲッターを改修したい、と持ち掛けたら、隼人は露骨に迷惑そうな顔をした。 「インベーダーは滅びた。今更あんな物騒な戦力は必要ない」 「ゲッターに乗ってねえと収まりが悪いんだよ」 「それはお前の気分の問題だろう。そんなところに回す予算も人…

わるいおとこ(竜號)

※現パロ モブ女子視点から見た竜號 謎の転校生がうちのクラスにやって来た。名前は早乙女ゴウくん。早乙女っていうと三組の早乙女ケイちゃんがいるけど、兄妹?いや姉弟?性格は全然違うけど、ちょっと雰囲気は似てるかも。家族なのか親戚なのか、ちゃんと訊…

さくらのゆめ(竜號)

「さくら?」 お前が首を傾げてこちらを見た。何度か瞬きをして、手に持っていた植物図鑑のページをめくる。お前が気に入っているその本は、何度も読み返しているからか随分とくたびれている。元々が古い本だ。載っているものの中には、この十三年間で失われ…

さよならじゃなくて(竜號)

「それじゃまたね、ゴウ」 「ああ。さよなら」いつもの挨拶、いつもの別れの言葉であるはずだった。しかしその日だけはいつもと違っていた。普段ならすぐに背を向けるケイが、ゴウを見つめたまま顔をくしゃりと崩したのだ。眉尻を下げて目を瞬かせる。その目…

あなたが守ったこの場所で、今日もきれいな花が咲く(サーガ號/隼人から號へ)

※サーガ號最終話後に隼人が號くんのお母さんに挨拶に行く話 息子さんは地球からいなくなりました。死んだかどうかすら分かりません。しかし、おそらくはもう二度と戻ってくることはないでしょう。 軍事機密という言い訳を盾にして、淡々と事実を一方的に述べ…

私は彼らと共にある(アークから見たアークチームの話)

※一人称「私」のアーク(機体)がひたすら語る 試作機の海で私は生まれた。兄弟達の残骸の上に私は長いこと横たえられていた。名前すら無かった。本来なら陽の光を浴びることなく朽ちるはずだった。 けれど私を長い眠りから目覚めさせた人間がいた。人間の名…

いつだって甘えていたいのさ(チェンゲ/竜號)

※2/22猫の日ネタ 竜號は同棲してる ※竜馬が大人げない28歳児 ゴウが子猫と遊んでいる。 猫じゃらしのおもちゃをふりふりと揺らすと、猫は小さい前足をめちゃくちゃに動かしながらそれを追いかける。始めはゆっくりと、やがて猫がその動きに慣れてきたら、…

それも君が生きていくための選択(カムイとゴール三世)

※「これは君を取り戻すまでの道筋」から繋がっている 権力の転覆を謀った大罪人は今、光の差さない地下深くに幽閉されている。 火星の恐竜帝国領内でもひときわ警備が厳重な場所だ。そこに辿り着くには数十に及ぶ扉と警備システム、守りを固めた兵士たちの目…

ガンバレ!カムイ 早乙女研究所食中毒事件、再び

早乙女研究所に未曾有の緊急事態が発生した。集団食中毒により所員の約七割が倒れ、研究所がほぼ機能停止に追い込まれたのだ。 「こうなっては敵わん。政府には医療スタッフの増援を要請したが、到着はまだ数時間先だろう。カムイ、お前は倒れた者の看護に当…

夜は眠れるかい?(チェンゲ/竜號)

※竜馬とゴウくんは同じベッドで寝る中だがまだ付き合ってはいないその監獄は絶海の孤島にあった。一度足を踏み入れたなら二度と戻れないとさえ言われている。世界から忘れ去られた場所。切り離された蜥蜴の尻尾の成れの果て。生きることも死ぬことも許されな…

この声と色彩が届きますように(チェンゲ竜號)

みんな、泣いていた。隣ではケイが両手で顔を覆いながら膝を折っていた。ガイも涙を滲ませながらケイの肩を支えた。そこから少し離れた場所で、クジラの乗組員たちも互いに肩を抱き合いながら泣いていた。彼らのリーダーであり父でもあった人を、車弁慶を想…

デルタのひみつ(モブ整備士とアークチーム)

「あ、二等辺三角形だ」 頭の中で思ったことがつい声に出ていた。僕は慌てて周りを見回したけれど、誰にも聞かれていないようだったのでほっと息を吐いた。そうして、下の方に見える三つの点を見下ろした。一つ目の点は、短い黒髪。黒猫の耳のような癖毛が立…

まよなかふたり(ネオゲの隼人と號)

「恐竜帝国との戦いの功績と、今後訪れるであろう脅威への備えとして、ネーサーは活動の継続を認められた。真ゲッターの凍結も当分は先送りだ」「あー……つまり、」「お前の食い扶持と宿は無事に確保されたということだな」「よっしゃあ!助かったぜ大佐!」 …