luica_novel

書いた小説の倉庫です

ゲッターロボ

世界最後の日にキスしよう(竜號)

誰かの声が聞こえた。振り返って耳を澄ませる。無機質な長い廊下には人影ひとつ見えず、微かな靴音さえ聞こえない。声が聞こえ始めたのはこれが初めてではなかった。時折どこか遠くの方で声がする。何度も何度も。自分が呼ばれているような気がしたが、人に…

これは君を取り戻すまでの道筋(拓馬とゴール三世)

※アニアク13話Cパートに至るまでの話※ゴール三世がだいぶ弟に甘い 人類が火星への移住を始めて数か月が経った。混迷を極めた状況も落ち着きを見せ、少しずつではあるが人々に笑顔が戻ってきた。しかしその中で、険しい表情を崩さない人物が一人。流拓馬は今…

眠り姫には敵わない(拓カムと獏)

拓馬にとって、冬とはカムイが自分からくっついてくる季節だ。ハチュウ人類は、暑さには非常に高い耐性をもっているが、逆に寒さにはとても弱い種族であるらしい。長い冬眠をすることもあるという。爬虫類自体が変温動物なので、その話を聞いても特に驚きは…

おまえはずるい!(拓カムとバイス)

※恐竜帝国で戦ってる頃の拓カムとバイスくん※バイスくんがカムイ様のこと大好きすぎる子になっている 「今日も疲れたな……なあカムイ~、早くメシ食いに行こうぜ~」「分かったからくっつくな。鬱陶しい」 ゲッターから下りたと思ったらこれだ。流拓馬はカム…

願い事の先はここにある(拓カム)

風が吹いている。欠伸をしたくなるような、穏やかで心地よい陽気だった。拓馬は芝生の上に寝転がり、そよ風に目を細めた。隣に座るカムイは小難しい本を読んでいる最中で、こちらを気に留める様子もない。構ってくれよとちょっかいを出したところで相手にさ…

ロミオとジュリエットにはならない(拓カム)

※「この場所は君だけのために空けておく」の続き※13話Cパートの先の話で、人間もハチュウ人類も火星で共生してる 結婚することを決めたはいいが、具体的に何をするかまではひとつも考えていなかった。指輪だろ、あと籍入れて、式とか上げたほうがいいのか?…

魔法の人(拓カム)

「俺、お前のこと好きかもしれねえ」 拓馬の冗談に思わず唇を綻ばせるその顔を見ていたら、感情が理性を追い越して、考えるよりも先に言葉が零れ落ちていた。カムイが驚いて目を見開いた。赤い目がじっと拓馬を見る。確かめるように。ひととき、沈黙が訪れた…

死なない君が欲しかった(拓カム)

※「でたなゲッタードラゴン」の後、アニアク13話Cパートに辿り着けなかった世界線の話※バグは覚醒したゲッタードラゴンに敗北しました※死ネタ注意かつシンプルにバッドエンド 火が燃え残ってくすぶる臭いがする。この臭いは嫌いだった。道場が襲撃を受けて、…

未熟で拙いかくしごと(拓カム)

※まだあまり打ち解けてない頃の拓カム 別に、気になっているわけじゃない。ただあいつの存在自体が目立つから嫌でも目に入るだけだ。アークへの搭乗訓練を終えた拓馬は、自販機で買った紙パックのココアを飲みながら、言い訳めいた呟きを頭の中で零した。ス…

この場所は君だけのために空けておく(拓カム)

※13話Cパート後の世界※火星での戦いが終わって、人間とハチュウ人類はなんやかんやで共生してる カムイはモテる。言っちゃなんだが引くほどモテる。まず顔がいい。文句のつけようがないイケメンだ。すっと通った鼻筋、凛々しい眉、涼しげな目元。どのパーツ…

ラプンツェルと金木犀(拓カム)

※火星での戦いが終わったあとのif※バッドエンド 長い長い戦いが、ようやく一つの終わりを見ました。人と竜は時に対立し、時に手を取り合って、新しい星で共に生きていくことを選びました。争いのない、束の間の平和が訪れたのです。戦いの日々が終わったこと…

星空に鼻歌(拓カム)

※アークのアニメ5話(女王蟲編)と6話(恐竜帝国編)の間くらいの時系列 歌がきこえる。星が夜空を埋め尽くすような夜だった。シャワーを浴び終えて自室へ戻る途中、どこからか小さな歌声が聴こえてきのだった。それこそ今夜の空模様にふさわしい、星がき…

飴と鞭の飴だけあげる(隼人とカムイ)

※早乙女研究所の平和なハロウィン※ショタカムイと神隼人が出てきますが、神隼人はただの親バカです 「いいかカムイ、今日はその格好で研究所内を練り歩いてもらう」「はい」「今からお前は魔法使いだ。完璧になりきれ。それが今回の任務だ、ぬかるなよ」「は…

ファーストキスは鉄の味(拓カム)

※拓カムのラッキースケベに獏と神隼人が巻き込まれる話 ドゴオ!と聞き慣れた音がして、獏は思わず耳を塞いだ。この音が聞こえたら、大抵の場合面倒なことが起こる。しかも獏は音を聞くより先に問題の現場をその目で目撃してしまっていた。大きな音と共に吹…

ふたりぼっちの共依存(隼人とカムイ)

※カムイくんが14歳くらいの頃の話 「神司令!D2押されています!」「てっ……敵の増援が来ました!このままでは持ちません!」司令室に響くオペレーターたちの悲鳴が、戦場の悲惨さを物語っている。画面には、蟲どもに喰らいつかれて身動きが取れずにいるD2の…

僕らはまだ春の途中(拓カム)

※アニアク最終13話後の話 ――しばらく見ない間に、ずいぶん髪が伸びたな。久しぶりに顔を合わせた時の第一印象はそれだった。そして今も同じことを思っている。 舗装なんてされていない道の上を、車はお構いなしに突き進んでいく。タイヤが石を踏むたびにがた…

ふたつの鼓動は繋がるだろうか(拓カム)

※アニアク13話Cパート後の世界線です 『カムイ様』その瞳から光が失せていく。かつての友は、今は忠誠を誓う部下として命を捧げた。しかし、こんな道半ばで絶たれるとは思ってもいなかっただろう。殺されると分かっていながら向かわせたのは自分だ。希望を掴…